ほどよくエアコンの効いた部屋でウトウトしていると、例のチビギャングが突然僕の前に現れた。17歳の僕は「ミミ、ボケちゃったの?」と毎日のように言われ、老化へまっしぐらなのに、目の前のチビギャングは前回会った時より数倍進化しているようだ。
いつものキャットフードの他に、美味しいおやつをおねだりする僕。それはいつものカリカリの十倍くらい美味しいのだ。食器棚の上から二段目に入っていることを知っているので、その棚に向かってニャーニャーと要求する。その泣き声は、甘える時の泣き方でなく、少々裏声を交えたドスの効いた効果100%の声なのだ。
小さな袋に入っているので、あっという間に食べ終えてしまう。もっと食べたいと例の声で叫んでもお母さんは知らんぷりだ。
「おやつ、もっと食べたいよ!」
「今、食べたでしょ。オヤツは1日2回だけよ!」
それでも泣き続けると、「ミミ!ボケたんじゃないの?今食べたの忘れたの?」
ボケちゃんではありませんよ、お母さん…。
しかし食欲はあり、しっかり食べているのに、太ももあたりの筋肉は確実に落ちている。顔もひとまわり小顔になったようだ。やはり老化現象なのだ。ショボン…。
こんな僕に比べ、久しぶりに見るチビギャングの身体は、ひとまわり大きくなっている。
力も声も、倍ぐらいに進化している。
僕のヒゲを摘もうとするし、耳を引っ張ろうとするし、背中を撫でているつもりなのだろうが、撫でるというより叩くというほうがピッタリだ。
どうしてチビギャングは、日々進化していけるのだろうか。どこまでどのように進化していくのだろうか。僕はこのチビギャングにいつまで付き合っていけるのだろうか?
僕は、それを考えると夜も眠れない(笑)。
チビギャングの進化のひとつ、フォークをしっかり握ってキーウィを口に入れているではないか。お父さんが毎朝食べているので“キーウィ”という果物の名前は知っている。
自分でフォークを握ることができるということは、指先も器用になっているのだ(これも進化のひとつだ)。だから僕のヒゲや耳などをつまむのは上手なわけだ。
しかし、今日、僕は考えた。
チビギャングより僕が100%優れていることがあると。
僕は、オシッコやウンチがしたくなると自らトイレに行って用を済ませ、ちゃんと砂をかけ綺麗にしてトイレを後にする。
それともうひとつ。歩くスピードが速い。チビギャングが追いかけてきた時、階段を駆け下る。この速さには、さすがのチビギャングも僕には勝てないのだ。
日々老化に向かっている僕ちゃんだが、もう少し長生きして「ミミ!いっしょに遊ぼうよ!」とチビギャングから声をかけてほしいものだ。