僕はミミ。今年で17歳。名前は女の子みたいだけど、立派な雄猫。
猫の平均寿命は14~15歳といわれているようだが、特別な持病もなくのんびりと余生を過ごしているはずの僕だったのだ。
ところがどっこい、9年前に我が家にやってきた二匹の姉弟ネコ。この二匹がうるさくて、賑やかで、今でも老猫である僕を年寄りと思っていないようで…。
昼寝している僕に「遊ぼうよ!」と突然猫パンチが飛んできたり、訳もなく追っかけてきたり。だから僕もチビ猫を追っかけまわして猫パンチを一発お返し。
これは、今でも続いている僕たちの日常なのだ。
そんなことより、一匹のチビ猫が僕の大好きな大好きなお母さんを分捕ってしまったのだ。いつもいつもお母さんを独り占めにしている。その名は”大吾朗”。
性格は超悪いのだが、フサフサした柔らかな毛並みと、かわいい鳴き声、そして甘え上手。これは人間に好かれる大吾朗の特技なのだ。
しかし、家族の一員になったのは、まだ生後三か月位の子猫だったし、同胞でもあるから許すことにした。二匹が眠っている時だけ、僕はお母さんに甘えて膝の上に乗っている。至福の時だ。
しかしながらつい最近、二匹の猫を差し置いて、チビギャングが登場したのだ。
猫同士であれば、初対面にはある程度の距離をおき、まず相手の様子をじっとうかがう。
しかし、このチビギャングは、四つ足でバタバタと大きな音を立て、僕に急接近し、背中をムギュっとつかんだ。
「イテテ…!何だこいつは!チビのくせに力が強いぞ!」
それから一カ月後、また四つ足のチビギャングがやってきた。
な、なんと、この前は四つ足だったのに、今日は「ヒト」になって二本の足で立ち上がり、僕に向かってスタスタと歩いて来るではないか。
そして前と同じように、僕の背中の毛をつかんだ。この前よりも力は強くなっている。
僕は隣の部屋に逃げ込んだ。しかしすぐに僕を見つけ、両腕を広げてバランスを取りながらスタスタ歩いてくる。
僕はテーブルの下に隠れた。しかし、30センチの隙間にスルリと潜り込んできた。僕は、また逃げた。
「何だ、このチビギャングは!大吾朗より手強そうだぞ!」